財産管理委任契約とは、信頼できる人に対して、自分の財産管理や事務手続きをお願いできる契約です。
財産管理委任契約は、任意後見制度と異なり、判断力が低下していない状態でも使えるのがメリットとなっています。そのため、判断力はしっかりしているけれども、体が不自由になり外出が難しい方などにも使える契約です。
一方で、財産管理委任契約は、公正証書などがないため、金融機関では対応してくれないところもあります。つまり、体が不自由で外出できないために、金融機関の窓口に財産管理委任契約をした人が行ったとしても、認めてもらえないこともあるのです。
今回は、在宅介護を受けている方でも使いやすい財産管理委任契約のメリット・デメリットについてお伝えしたいと思います。
1. 財産管理委任契約とは
財産管理委任契約とは
体が不自由で外出が難しい方、入院などで公的処理ができない方などは、財産管理委任契約が便利です。
本人が本当に信頼できる人と、財産管理委任契約を結ぶことで、本人の事務手続きや財産管理を行ってくれます。
例えば、不動産を持っている人などは、さまざまな手続きや契約・財産管理が必要になることもありますが、財産管理委任契約を結んでおくことで、代理人が事務手続きを行うことができます。
判断力が低下してなくても大丈夫
成年後見制度のように、認知症などで判断力が低下していなくても、財産管理委任契約は機能します。
そのため、判断力はしっかりしているけれども、長期入院している方や、外出できない方でも利用することができます。
2. 財産管理委任契約は、こんな人におすすめ
財産管理委任契約は、判断力が低下する前から利用することができるのが最大のメリットです。また、判断力が低下してからでは、初期契約が成立しません。
そのため、判断力がしっかりしていて、体が不自由で外出できない・入院や長期療養で外出が難しい人におすすめと言えます。
3. 財産管理委任契約の作成方法
財産管理委任契約は公的なものは必要ない
財産管理委任契約は、公正証書などの作成が必要ありません。極限をいうと、口約束でも大丈夫ですが、財産を管理するためトラブルに発展する可能性もあります。
できれば、自宅近くの公証役場へ契約者と本人で出向き、公正証書を作成しておくことをお勧めします。公正証書に、細かい取り決めを記載してもらい、証明書として保管することができます。
判断力低下したら、監督人をつけることも
本人の判断力が低下した場合には、財産管理委任契約だけでは監督人がいないため、自分の財産を適切に使われているかどうか判断できなくなってしまいます。
そのため、判断力が低下した後には、任意後見制度への切り替えなどを公正証書に残しておくこともできます。
任意後見制度は、本人の判断力が低下した後に、自分が選んだ人が財産管理や事務手続きを行ってくれる制度です。任意後見人は、裁判所が決めた弁護士などの監督人に、適切に財産を使っているのか監督されます。
監督人への月々の支払いが発生しますが、判断力低下後の不安があれば、任意後見制度の利用もおすすめです。
https://kaigo.link/entry/voluntary-guardianship-guide/cost-demerits-procedures/
4. 財産管理委任契約のメリット
判断力が低下していなくても使える
財産管理委任契約は、本人の判断力が低下していなくても使うことができます。
他の人の財産使い込みを防げる
信頼できる人と、財産管理委任契約を締結しておくことで、身内や他の人が自分の財産を使い込むことを防いでくれます。
委任状を書く手間が省ける
金融機関などで、多額の預貯金を動かす時には、委任状が必要となることもありますが、財産管理委任契約の契約書を作成しておくことで、さまざまな委任状を書く必要がなくなります。
判断力が低下しても効力がある
本人の判断力が低下しても、財産管理委任契約の効力は続きます。また、特約を使えば、死後処理もお願いすることができます。
【任意後見人では、死後処理はできません】
5. 財産管理委任契約のデメリット
財産管理委任契約の最大のデメリットは、社会的信頼に欠けるということです。先にお伝えしたように、財産管理委任契約を受けている人が、本人の代わりに金融機関の窓口に出向いても、代理人として取り扱ってくれないこともあります。
具体的なデメリットはどんなものがあるでしょうか。
社会的信用が低い
財産管理委任契約は、信頼のおける本人同士の間でさまざまな取り決めができ、自由度が高いです。しかし、任意後見制度のような公正証書などがあるわけではないため、社会的信用が低くなります。
金融機関や相手先によっては、委任状などが別で必要になることもあります。
取消権がない
財産管理委任契約では、成年後見制度のような本人が詐欺や誤った契約をした場合の取消権がありません。
認知症などで判断力が低下している場合には、注意が必要です。
監督人がいない
成年後見制度では、裁判所が決めた弁護士などの監督人がいます。そのため、後見人が本人の財産を、本人のために使用しているかどうかの監督役がいます。
しかし、財産管理委任契約には、監督人がいないため、本当に信頼できる人を選ぶ必要があります。
まとめ
自分の財産を、子供や身内に管理してもらうには、信頼できる人に頼むのが1番です。特に、判断力が低下する前に、本当に信じられる人を選んでおくことで、安心して予後を過ごすことができます。
財産管理委任契約は、手軽で自由度が高い一方で、社会的信頼も低いため、メリット・デメリットを理解した上で、利用しましょう。