終身入居ができ、入居一時金のかからない特別養護老人ホームは、これからの介護社会になくてはならない存在です。しかし、大切な身内を終身入居する施設と考えると、費用面だけでなく特別養護老人ホームとはどういうメリットやデメリットがあり、利用する家族に適しているのかどうか検討する必要があります。
今回は、費用以外にも、特別養護老人ホームのメリット・デメリットを詳しく紹介していきます。また、特別養護老人ホームにはどんな入居条件があるのか、月額費用はどのくらいかかり、内訳はどのようなものなのかも説明していきますので、少しでも検討のお役に立てればと考えます。
1. 特別養護老人ホームへの入居条件
特養に入居する場合には、以下の条件があります。
入居条件が満たされていても、入居判定委員会により、入居の順番が決まります。おもに、介護度の重度さや、緊急度の高さにより優先順位が決まります。
1. 65歳以上・要介護3以上の高齢者
2. 40歳以上から64歳までの特定疾病による要介護3以上の人
3. 要介護1から2ではあるが、在宅介護が困難とみなされた場合
・認知症や知的障害・精神障害などがあり、意思疎通も難しく、日常生活に支障がある場合
・家族からの虐待がある場合
・一人暮らしもしくは、同居家族が病気や高齢者のため、十分な介護が見込めない。さらに、地域の介護サービスが十分に受けられない場合
2. 特別養護老人ホームのメリット・デメリット
1. メリット
・費用が安い
特養は、有料老人ホームと異なり、入居時の一時金がかかりません。月額費用のみを支払うことになります。
・終身入居できる
基本的には、入居後は終身にわたり入居することができます
・24時間体制で介護を受けることができる
24時間体制で、介護スタッフが常駐しているため、十分な介護を受けることができます
2. デメリット
・入居条件がある
入居するには、前述したように入居条件があります
・待機期間が長い場合がある
特に都心では、入居待ちに数年かかる場合もあります。
・医療体制が不安
特養には、看護師数名に対して、100人を超える入居者を看護することもあります。常に医療行為が必要な方には、もっと医療体制の整った施設の方が安心かもしれません。また、感染疾患にかかっている方も入居できない場合があります。
3. 特別養護老人ホームの費用まるわかり
特養は、入居時の一時金がかかりません。これは、数十万や数千万するような有料老人ホームと比べても、敷居が低く利用しやすいといえます。
月額にかかる費用としては、介護サービス費・居住費(家賃)・食費(相場4~5万円)・日常生活費用(相場約1万円)の主に4種類です。部屋タイプと介護度により大きく異なりますが、すべてを合わせた月額相場は、約7万円~15万円ほどになります。
介護サービス費
介護サービス費で大きく異なるのは、介護度と部屋の種類です。
例えば、個室タイプで要介護5の方だと1割負担で約3万円くらいの介護サービス費となります。さらに夜間職員配置(痰の吸引・褥瘡予防など)などの管理が必要になると加算が発生します。
最も安い部屋の種類は、多床型(大部屋)になります。大部屋で要介護5の方だと1割負担で約2万5千円くらいの介護サービス費となります。
居住費
家賃にあたるのが、居住費です。約6万円くらいが相場となります。
食費
1日3食分の食費が請求されます。これは、外泊などをした場合も減額できず、1カ月分満額支払う必要があります。
相場は1か月あたり、約4~5万円です。
日常生活費
歯ブラシなどの日用品や、本などの嗜好品購入はこちらに含まれます。相場は約1万円になります。
4. 低所得者用の減額制度について
収入と資産が基準を下回る場合に受けられるのが、減額利用になります。所得によって、決められた負担限度額があり、特養でかかる費用が限度額を超えた場合に、介護保険から補助されるという制度になります。
まずは、入居者の収入と資産に合わせて、 4段階に分けられ、負担限度額が決まります。
まずは、住んでいる市町村に認定を受ける必要があるので、申請しましょう。
第一段階
生活保護を受けている人・老齢福祉年金受給者で、本人と世帯全体が住民税非課税の人
→例えば、大部屋である多床部屋の居住費は0円等。
第二段階
本人と世帯全体が住民税非課税で、課税年金額・所得金額が80万円以下の人
→例えば、大部屋である多床部屋の居住費は11,100円、ユニット型個室24,600円等
第三段階
本人と世帯全体が住民税非課税だけれども、第二段階には当てはまらない人・特例減額措置が認められた人
→例えば、大部屋である多床部屋の居住費は11,100円、ユニット型個室39,300円等
第四段階
住民税課税世帯の人
→例えば、大部屋である多床部屋の居住費は25,650円、ユニット型個室60,180円等
まとめ
特別養護老人ホームは、入所一時金の負担がなく、終身入居できるため、家族には安心できる施設といえるでしょう。しかし、都心に至っては、待機期間も長いため、検討している場合は早めの申し込みが必要です。
また、原則終身入居のため、年金や所得の範囲内で利用できるのも大きなメリットです。在宅介護に限界を迎えてしまった場合は、メリット・デメリットを十分理解したうえで、検討してみてください。