現在の睡眠薬は、昔のものと違って安全性が高くなっています。一方で、高齢者や要介護者の方は、内臓が成人よりも機能しなくなってきているため、効きすぎや副作用が出る可能性もあります。
今回は、高齢者や、要介護者が頻用している睡眠薬がおこす転倒や傾眠の副作用について触れてみたいと思います。また、睡眠薬の必要性を多くの患者さんを現場で見てきた薬剤師がお伝えしていきます。
睡眠薬をご家族やご自分が処方されていて、副作用かな?と思うことが以前にあったならば、是非参考にしてみてもらえると嬉しいです。
1. 4人に1人の在宅高齢者が睡眠薬を使用
医薬品メーカーのMSDの調べでは、在宅介護を受けている高齢者の26%が睡眠薬を使用していることがわかりました。
睡眠がうまくとれないのは、日中の運動不足や昼寝、日内リズムがうまく取れていないことも原因として考えられます。
睡眠薬を必要以上に使用することで、転倒・骨折のリスクや認知症状の低下につながる可能性もあります。
2. 不眠の原因を考えることが大切
夜間に眠れていない方、すぐに起きてしまうので、介護している家族が困り果てている方も多くいらっしゃいます。
脳が覚醒してしまいなかなか眠れない方や、眠りが浅くすぐに起きてしまうなど、睡眠薬が必要な方もおります。しかし、今一度不眠の原因を振り返ることも大切です。
例えば、夜間にトイレで起きてしまうので深く眠れていない方は、睡眠薬よりも泌尿器の症状を改善する必要があります。
他にも、日中にデイサービスでうとうと眠気が出てしまう方は、睡眠薬が効きすぎて持ち越し効果に繋がっている可能性もあります。
まずは、夜間に眠れないという原因があれば、そちらの改善をするのがベストです。
3. 高齢者に使われやすい睡眠薬デメリット
高齢者の方には、翌日に持ち越し効果の少ないと言われている短時間作用型睡眠薬がよく用いられます。例えば、マイスリーやレンドルミン、ハルシオンなどは、【無いと眠れない】と心理的依存になってしまっている人も多いです。
短時間作用型睡眠薬は、ほかの長時間効くものよりも、たしかに翌日の眠気などは少なくなります。一方で、夜中に起きた時などに【脳は眠っているのに身体が起きてトイレに行く】という感覚になるため、転倒やふらつきがとても多くなります。
また、一過性健忘といって、飲酒している人や高齢者に起きやすい副作用があります。例えば、寝る前に睡眠薬を服用してから、寝付くまでの記憶がない・起きてから数時間の記憶があやふやな場合には、一過性健忘が出ている可能性があります。
その場合には、薬を減らしたり、飲み合わせが悪くないかほかの薬を確認する必要があります。
4. 睡眠薬を偽薬にする場合も
睡眠導入剤・睡眠薬を使っていて、翌日のデイサービスでうとうとしてしまう場合には、持ち越し効果の可能性もあります。
患者様の中には、【薬を飲んだ】という安心感から、寝付きが良くなる方もいらっしゃいます。実際に、薬局でも高齢者の方・要介護認定を受けている方は、転倒リスクや薬の効きすぎもあるため、医師が偽薬対応しています。
偽薬とは、薬の代わりに乳糖とよばれる薄味のお砂糖みたいなものを粉薬としてパックしてお渡ししています。
偽薬を出す場合には、医師にあらかじめ家族が相談しておくことが大切です。その後、本人と共に診察を行い、本人には、【睡眠薬】として処方箋を書いてもらいます。
薬局でも、処方箋に【偽薬】などの指示が出ていれば、それに沿ったご説明をしますので、安心してください。
本人は、乳糖を睡眠薬として、寝る前に飲んでもらうことで、睡眠薬なしに眠れるようになった方もいらっしゃいます。
まず自宅で試されてみたい方には、薬ではないので偽薬は市販品もあります。
偽薬を使うときには、薬を増やしたがる方なら、【前よりよく効く強めの薬がでたよ】とお伝えすると、受け入れやすいです。
持ち越し効果にお悩みならば、【次の日に眠くなりにくい薬なんだって】と、プラスの暗示をかけることで、飲んでみたいという気持ちになりやすいといえます。
まとめ
要介護者が、夜に寝てくれないのは、家族は非常に大変になります。一方で、睡眠薬を過度に飲み過ぎると、日中が眠たくなってしまい、悪循環につながります。
心理的な問題だけであれば、プラセボ効果【偽薬効果】も期待できます。
眠れない原因をチェックして、睡眠薬の必要性を確認してみてはいかがでしょうか。