老健は、症状が安定していて、リハビリや看護ケアを必要とする高齢者が入居できる施設です。
特養よりも入居しやすいため、家族の仕事が忙しかったり、遠方に住んでいて介護することが難しい場合にも、入居検討されることが多くなっています。
しかし、老健に入居する場合には、薬代が高いと入居を断られてしまうのでは?という心配の声がよく聞かれます。これには、老健では、医療保険が使えないという施設なりのジレンマが理由になってるのです。
今回は、老健の入居において、薬代を確認している理由と、具体的な1日あたりの薬の金額についてくわしく説明したいと思います。
1. 老健とは
老健とは、退院後など症状が安定していて、リハビリや医療ケア・看護や介護ケアが必要な要介護認定を受けた方が入居する施設です。
老健の目的は、治療や終身の利用ではなく、家庭への復帰を目指すための施設となります。そのため、原則的に3ヶ月から半年以内に、自宅へ帰ることになっています。
最近では、家族が遠方だったり在宅介護ができない・特養の入居待ちなどで退所後にいく施設がないなどの理由で、老健の滞在が長期化しているケースも多くなってきており、問題視されています。
2. 老健での医療費や薬代の考え方
介護保険と医療保険は、一緒に使えません。老健では、介護保険を利用しているため、施設内では医療保険を使うことができないのです。
そのため、日常の診察費用や薬代、血液検査代などは、すべて老健が負担することになっています。一方で、画像診断(レントゲンやCT)など一部の医療費は、医療保険を使うことができます。
高額な薬を毎日使用しなければいけない方や、外部の診察が常に必要になる方などは、老健が経営していけなくなってしまうので、受け入れが難しいのが現実です。
3. 入居時の薬代の上限とは?
入居時には、審査がありますが、薬代も確認されます。1日あたりの薬代の上限は、施設ごとに決められています。
多くの施設で、 1日あたり薬価約400円〜500円が上限とされており、高く見積もってくれる施設では、800円以上というところもあります
しかし、入所している人の全体の平均では、1日6種類以下で、薬価約200円〜300円が平均的です。
高齢者の服薬において、 1日6種類以上服薬すると有害事象のリスクがあがるといわれています。そのため、老健に入所すると薬が減ったり整理されることもあります。
4. 老健は、薬代が高いと入れないの?
老健は、前述したとおり、血液検査や診察・点滴や薬代は、すべて施設が負担となります。また、医療保険が利用できないため、自費分の金額が施設負担となるのです。
そのため、高額な薬を必要とする方は、入所相談のときに、経営上受け入れが難しいという話になることが多いです。
もしくは、高額な薬が必要な人は特に、医療ケアも必要とする方が多いです。老健では、医療ケアには限界があるので、受け入れが難しくなるともいえます。
しかし、全員が入れないというわけではありません。
老健の入居に伴い、不要な薬の整理を施設医がしてくれることもあります。また、薬価の安い他の薬に変更したり、ジェネリックに替えることで、薬価を下げることもできます。
また、本人が老健に入る必要性が高く優先度が高い場合は、施設によっては、薬代の上限を無視して入れることもあります。
老健に入居することで、薬の整理もできるので、本当に必要な薬の取捨選択のきっかけにもなるのです。
5. 入居中は、かかりつけ医にはかかれない?
老健には、常勤の医師の配置が義務付けられています。そのため、原則として、常勤医師の診察をうけることとなります。
入居している間は、かかりつけ医にはかかれません。外出や外泊している時も、勝手にかかることはできません。
これは法令で決まっており、「かかりつけ医は、入所者の方に“施設医師の依頼状なし”には、診療・検査・投薬・処方箋の交付等をしてはいけない」ことになっています。
緊急など、外部の医療機関への診察が必要な場合は、施設医からの依頼状が必要となりますので、まずは施設に相談しましょう。
まとめ
老健は、症状が安定している方向けの、自宅復帰リハビリ施設になります。
老健では、医療保険が使えないため、医療ケアに限界があるというジレンマもあります。常勤の医師がいますが、高額な医療費になるようなものは使えないのが現状です。