認知症の方をもつご家族は、ご本人の過去の話を聞くことがよくあるのではないでしょうか。普段は口数が少なくても、昔の話になると、鮮明に目を輝かせながら様々なことを教えてくれます。
認知症の回想法とは、過去の出来事や体験をよく覚えている認知症の特性を生かしたリハビリになります。
興味深いことに、回想法を行うと、家族に話す内容と、友達と話す内容、スタッフと話す内容で話が異なることもあります。
今回は、体験を言葉にすることで、脳の刺激につながるといわれる認知症の回想法について詳しく解説したいと思います。
1. 認知症の回想法とは?
認知症の回想法とは、高齢者が昔を思い出しながら話をする行動をリハビリに活かしたやり方となります。
かつては、過去の話ばかりする高齢者の姿は、おかしいと考えられていました。しかし、昔の楽しかった思い出や、こころに残る思い出を思い出すことは、自然の姿だと考えられるようになりました。これが、回想法の生まれたきっかけになります。
回想法をするときに、過去の思い返しを行うことで、脳の刺激へとつながると言われています。また、基本的には、写真などの道具を使わずに話を進めることが多いため、コミュニケーションの向上・維持にもつながります。
2. 回想法の種類とは?
回想法の種類は、大きく分けて2つあります。1つは、グループで行うグループ回想法です。もう1つが、個人で行う個人回想法となります。
グループ回想法のやり方
週1回や、定期的に曜日を決めて、だいたい同じ時間に1時間程度行うのが良いと言われています。人数は6〜10人以内が理想です。
同じ体験をした人や、同じ地域に住んでいる人同士だと、話が盛り上がりやすくなります。
グループ回想法は、他の人の話を聞いたり、同調する必要もあるため、攻撃性の高い方や、コミュニケーション能力が低下している場合には、参加が難しいといえます。
個人回想法のやり方
週1回を目安に、1時間程度で行うのが良いと言われています。
個人回想法は、自宅でもできるため、訪問介護やヘルパーに協力してもらうこともできます。個人回想法の方が、本人の記憶に密着して話を進めていくことができます。一人一人の個性や経験を重んじることが、より重要といえます。
3. 回想法の効果とは?
気持ちを落ち着かせることができる
認知症の方は、過去を振り返りながら話すときには、不思議と落ち着いておられる方が多いです。しかし、残念ながら、家族に話すと、またその話?みたいになってしまい、話すのをやめてしまうこともあります。
回想法という機会を作ることで、自分の人生について、ゆっくりと振り返り、人に聞いてもらえることで、心の落ち着きにつながります。
脳の刺激につながる
回想法を行なっているときには、過去を思い出したり、それを言葉で表現するなど、多機能に脳が活躍します。
そのため、回想法を行うことで、脳の刺激につながることがわかっています。
コミュニケーションの向上・維持につながる
回想法では、1人で思い出すだけでなく、聞き手に伝えるために声に出して話をするという行為を行います。また、他の人の話を聞く場面もあるので、コミュニケーションの維持につながります。
4. 回想法の準備・行うポイントは?
回想法の準備とは?
回想法を行うには、事前に個人の背景を知っておく必要があります。ヘルパーや職員は、以下のことを確認しておきましょう。
・家族状況
・その人を取り巻く環境
・経歴や病歴、仕事歴など
・好きなことや嫌いなこと
・過去の経験など
必要に応じて、写真や資料、絵などを使うと、話が膨らみやすくなるといえます。
回想法のポイントは?
話している内容が変わっていても、その人には事実
歴史的にも話の内容が違っていたり、本人が前に話した内容や事前資料と違っていることもあります。しかし、認知症の方にとっては、今話している内容が、今思い出している事実であることを忘れてはいけません。
他の方が指摘してしまったとしても、うまく話の流れを作ってあげて衝突しないようにする配慮も必要です。
聞き手として関係性を築く
聞き手との関係性によって、回想法で話す内容や深みが変わるのが、回想法です。スタッフにするときの話の内容は、家族に話す内容とは変わることもあります。
聞き手として本人と関係性を築いていくことが大切です。
他言しない
回想法では、その方の人生経験を元にして話を進めるため、家族にとっても本人にとっても、プライバシーに配慮する必要があります。
他言はせずに、心に留めておくことが必要です。
まとめ
回想法は、認知症の特性を生かしたリハビリになります。やり方をしっかりと把握して、うまく話しやすい環境を整えてあげることで、本人もゆったりと話すことができます。
ぜひ参考にされてみてください。