糖尿病は、国民病ともよばれ、予備軍を合わせると全国に2,000万人以上いると言われています。約5人に1人が予備軍もしくは糖尿病があることがわかります。
糖尿病自体は、自覚症状もあまりないため、治療が遅れたり、進行が進んでしまうこともあります。しかし、糖尿病で最も怖いのは、合併症と言われています。
今回は、合併症がこわい糖尿病とはどんな病気なのか?糖尿病の合併症や順序についてわかりやすく解説したいと思います。
1. 糖尿病とは?
食事をした後は、通常は膵臓からインスリンが分泌されて、血中の糖を取り込み、血糖値が高くならないように働いてくれます。しかし、インスリンが十分に分泌されなかったり、インスリンが効きにくくなってしまうと、血糖値が高くなるために糖尿病となってしまいます。
糖尿病には、いくつかの種類があります。
1型糖尿病
原因はわからないことが多いですが、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が自己免疫により破壊されてしまうことなどで起こります。ほかにも、ウイルス感染のこともあります。
インスリンは膵臓のβ細胞からしか分泌されないため、インスリンが出なくなり1型糖尿病となってしまうのです。
1型糖尿病の場合には、インスリン注射をして外からインスリンを補う治療をしていきます。
2型糖尿病
生活習慣やストレス、睡眠不足などにより段々とインスリンが分泌しにくくなったり効果がでにくくなることで起こります。
血糖値が高くなりやすいなどの遺伝的素因もありますが、生活習慣が絡み合って発症します。
ほかにも、食べた後にインスリンはすぐ分泌されるのですが、少し遅れてから分泌されてしまう方も多いことがわかっています。そのため、インスリン分泌が遅れることにより、食後の血糖値が高くなりやすくなります。
妊娠糖尿病
妊娠前から糖尿病がある方ではなく、妊娠中に初めて高血糖や糖尿病傾向にある方を妊娠糖尿病といいます。
妊娠中には、ホルモンの影響により、インスリンが効きにくくなってしまいます。多くの場合では、出産後に正常値に戻りますが、元々血糖値が高めだった方は、境界型糖尿病や糖尿病として残ってしまうこともあります。
小児糖尿病
子供の時期に発症する糖尿病となります。多くの場合は、1型糖尿病となりますが、最近では食生活や運動不足による肥満から、2型糖尿病を発症してしまう方もいます。
2. 糖尿病の合併症とは?
糖尿病により血管が脆くなってしまうのは、ご理解いただけたかと思います。血糖値が高い状態が続くと、手足の先や目、腎臓などの細い血管が集まるところに合併症が起こりやすくなります。
糖尿病には、3大合併症とよばれる代表的な合併症があります。
糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は、高血糖により末梢などの神経細胞がうまく働かなくなることで起こります。ほかにも、糖尿病になると動脈硬化が起こりやすくなるため、神経細胞へ十分な栄養がいかずに起こってしまうとも言われています。
糖尿病神経障害は、多くの場合で多発性となっており、さまざまな箇所に症状が現れます。手足の痺れや痛み、感覚の低下や下痢・便秘などが代表的です。
糖尿病神経障害の症状に気づかず、治療が遅れる場合もあるため注意が必要です。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症の初期には、自覚症状がないため気づかないことが多いです。そのため、糖尿病の方は、定期的な眼科での検診が必要です。
糖尿病網膜症では、目の中の網膜と呼ばれる光を受け取り視神経に伝える部分が、働きにくくなってしまいます。これは、細い血管の血流が悪くなったり、高血糖や動脈硬化で血管が傷ついて詰まってしまうことによりおこります。
糖尿病網膜症が進むと、見え方がかすれたり、虫が飛んでるような飛蚊症とよばれる症状がでたりもします。糖尿病網膜症により失った視力の回復は難しいとされていますが、状態によってはレーザー治療で進行を防ぐこともできます。
糖尿病腎症
腎臓には、毛細血管とよばれる細い血管でできた糸球体というものがたくさんあります。糸球体は、体に必要な栄養を残して、老廃物を濾過してくれる役割があります。
この役割により、老廃物は尿として排泄されているのが通常の働きです。
しかし、糖尿病による高血糖状態が続くと、血管でできている糸球体は大幅なダメージを受けてしまいます。
そのため、老廃物のみを濾過するはずの糸球体がうまく働かなくなり、体の栄養となるタンパク質も濾過してしまいます。その結果、尿蛋白が陽性となります。
さらに進行が続くと、糸球体が機能しなくなり、老廃物がうまく濾過されずに体の中にまわってしまい、腎不全や尿毒症につながります。
糸球体は再生しないため、早めの治療が必要です。
3. 糖尿病の合併症には順番がある?
糖尿病の合併症は、【しめじ】とよばれており、多くの場合で、神経障害→網膜症→腎症の順に進んでいきます。
しめじとは、神経障害(神経のし)、網膜症(目の症状のめ)、腎症(腎臓のじ)から派生されています。
糖尿病の合併症は、3大合併症以外にも起こります。たとえば、糖尿病により動脈硬化が進めば、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高くなります。
また、糖尿病の人は、アルツハイマー型認知症の原因と呼ばれるアミロイドβがたまりやすいことがわかっています。そのため、通常の人よりも、約1.5倍アルツハイマー型認知症にかかりやすいと言われています。
4. 糖尿病は介護につながりやすい?
糖尿病は、合併症により、視覚障害や神経障害・腎症により全身状態が悪くなる可能性があります。そのため、制限のある生活を送るようになることで、介護につながる可能性があります。
糖尿病は、尿中に糖を排泄させたり、インスリンを効きやすくする飲み薬、インスリン注射などさまざまな治療薬が出ています。早期治療と持続的な血糖値の安定を目指すことで、合併症への移行も防げると言えます。