認知症の方を介護している家族に多い悩みが、暴言や暴力になります。とくに、心を許している家族に対しては、認知症の方は、強く当たってしまう傾向にあります。
今回は、認知症の暴言・暴力の原因や適切な対応・予防についてお伝えしていきたいと思います。認知症の暴言・暴力は、ご家族が最も大変で、悩ませる症状ですので、少しでも参考になればと思います。
1. 認知症の方の暴言・暴力の原因とは?
冷静な判断ができない
認知症の症状が進むにつれて、自分の感情をコントロールすることが難しくなります。そのため、イライラしやすい状況になります。
さらに、脳の萎縮により理解力も低下しているので、思うようにいかず暴言につながってしまいます。
薬によって興奮しやすくなっている
認知症の進行を抑える薬によっては、興奮しやすくなってしまうものもあります。抑うつ状態だった方が、元気になる程度なら良いのですが、夜中に攻撃的になるなど困った状態になることもあります。
特に、新しい薬を始めたばかりの頃や、お薬を増量したときに起きやすいといえます。
不安を感じやすい
認知症の方は、さっきまで何が起きていたかや、これからどんなことが起きるかなどの予測ができず、常に不安と隣り合わせになっています。
そのため、混乱や不安から、暴れてしまうこともあります。
認知症の種類が、原因に
例えば、レビー小体型認知症では、幻覚や幻聴が出やすくなる特徴が知られています。本人には感じている幻覚や幻聴をきっかけに、暴力的になることもあります。
また、認知症は脳の萎縮がみられるため、萎縮している部位によっては、感情コントロールがうまくいかずに、暴言が出やすくなります。
2. 認知症の暴言・暴力の対応とは?
本人と距離をとるようにすることが大切
暴言・暴力の適切な対応は、距離を置くことになります。言い返したり、やり返すことは、絶対に行ってはいけません。
怪我をしないように物理的に距離をとってもらい、他の人が間に入ってもらうことも良いと思います。また、暴言ばかり言われていると、家族も困惑してしまいます。その場合には、ショートステイなどを利用して、物理的にも精神的にも距離を置くことが良いです。
かかりつけ医などに相談を
認知症の方の暴言・暴力に悩むようなら、医師やケアマネージャーに相談してみましょう。介護のプロ目線からみて、何か原因が見つかるかもしれません。
また、医師に相談することにより、落ち着いてもらう薬の処方を受けることもできます。
原因があれば理解してあげる
本人が怒ったきっかけになる事柄があれば、避けてあげる・サポートしてあげるなど、原因を究明することが必要です。本人の話をよく聞き、まず原因を探りましょう。
3. 攻撃性のある認知症とうまく付き合うには?
介護者を交代してもらう
身近な家族ほど、攻撃的になるといわれています。ヘルパーや近所の人には、優しいけれども、家族だけになると急に態度が変わるなどもよくあります。
ヘルパーに相談して、介護者を家族だけでなく信頼のおけるヘルパーに協力してもらいましょう。
落ち着かせる薬を使う
あまりに攻撃的になっている場合には、かかりつけ医に相談してみましょう。心を落ち着かせる頓服の薬や、イライラを落ち着ける漢方薬などもあります。
本人を尊重する
本人の意見に耳を傾けてあげましょう。常に不安におびえていないか、やりたいことが自力でできていないなどのストレスを感じているかもしれません。
また、幻覚に悩まされていることもあります。
本人に寄り添い、明るい気持ちにしてあげることが大切です。
体調は万全か確認する
認知症の方は、自分の体調が悪くても、理解できなかったり、うまく言葉で表現できないこともあります。
水分摂取を拒否してしまい、便秘がちになっていたり、脱水気味になっていることもあるので、注意が必要です。
外出をさせる
暴言や暴力がひどくなったからといっても、家に閉じこもってしまうと、さらにエスカレートしがちになります。散歩や近所だけでも良いので、外に出ることが大切です。
まとめ
認知症の暴言・暴力は、介護している家族には特に強く現れる傾向にあります。そのため、家族の負担がおおきく、時には介護を投げ出してしまいたくなることも多いかと思います。
認知症の方の考えや感じていることを、振り返ってもらうことで、家族の対応が変われば、本人の状態も良くなることがあります。無理なく接していただければと思います。